Visium 空間的遺伝子発現解析

Visium 空間的遺伝子発現解析では組織切片から、細胞の位置情報を保持したまま、遺伝子発現解析を行うことが可能です。

  • 組織内の細胞の位置情報を保ったまま、RNA発現解析
  • HE染色画像と、遺伝子発現マップを比較検討

Visium 空間的遺伝子発現解析

Visium 空間的遺伝子発現解析では組織切片から、細胞の位置情報を保持したまま、遺伝子発現解析を行うことが可能です。

  • 組織内の細胞の位置情報を保ったまま、RNA発現解析
  • HE染色画像と、遺伝子発現マップを比較検討

Visium 空間的遺伝子発現解析の特徴

6.5 mm x 6.5 mmの区画内に載せた組織から、5000スポットの細胞を解析できます。11 mm x 11 mmの区画内に載せた組織から、14,336スポットの細胞を解析できます。1スポットで平均1~10個の細胞を捕捉し、1スポットに1種類のバーコードを付与して位置情報を保ったままmRNA解析が可能です。

1スポット当たり直径55 µmの解像度で、スポットの中央点は100 µmの間隔で位置しています。

解析可能なサンプル

アプリケーション Visium CytAssist for FFPE* Visium FF**
サンプル ホルマリン固定
パラフィン包埋サンプル
新鮮凍結OTC包埋サンプル
動物種 ヒトまたはマウス 動物組織
解析メカニズム 全トランスクリプトームパネルのそれぞれの標的遺伝子に対するプローブを使用して組織中の発現遺伝子を検出する 組織中のmRNAをpolyA鎖を介して捕捉し発現遺伝子を検出する

*:FFPE:Formalin-Fixed Paraffin-Embedded
**:FF:Fresh Frozen

解析例

ライブラリ調製前に組織をH&E染色し、染色画像と遺伝子発現解析マップを重ね合わせることで、細胞の特徴と実際の遺伝子発現を比較できます。

(SpaceRanger解析結果へのリンク)

Visium FF 解析例 (マウス大脳)

Visium CytAssist for FFPE解析例 (マウス大脳)

サンプル調製のフロー

10x Genomic社のVisium Spatial Kitを使用し以下のフローでサンプルを調製します。詳細は受託サービスの流れをご確認ください。

Tissue Optimization=TO(組織透過処理時間の最適化)
Gene Expression=GEX

サンプル受け入れ条件

Visium CytAssist for FFPE Visium FF(新鮮凍結)
  • HE染色・イメージングし、崩れがないことを確認している
スライドの貼り付け位置に切片が貼り付けられていること。
(6.5mm x 6.5mmの場合) キャプチャーエリアより大きな切片の場合、中心位置を指定したスライドを提出すること。
切片のサイズはキャプチャーエリア (6.5mm x 6.5mm) 以内に収まること
薄切片を5 µm以下で切り出せること 薄切片を10 µm以下で切り出せること
以下のいずれかのガラススライドに切片を貼り付けていること
注)国内に流通しているスライドの中には対応できないサイズのものがありますので、必ずご確認ください
  • Epredia Shandon ColorFrost Plus
  • Fisher SuperFrost/ColorFrost
  • Sigma-Aldrich Poly Prep Slides
  • VWR SuperFrost Plus
包埋方法はOCTのみ。 規定品を使用していること
Tissue-Tek* O.C.T. Compound 25608-930(サクラファインテック)
既定の方法で凍結し、組織切片を作製・切り出していること
(弊社へ委託可能) GEXの解析を行うサンプルは、TOによる細胞透過酵素の反応時間を検討済みである
サンプル中のRNAの品質が高いこと
(弊社へ委託可能)FFPEから薄片を切り出しRNA抽出を行い、DV200が30%以上であることを確認していること
サンプル中のRNAの品質が高いこと
(弊社へ委託可能) 事前に、OCT包埋組織から薄片を切り出しRNA抽出を行い、RIN値が7以上であることを確認していること
外部リンク:Visium CytAssist Spatial Gene Expression for FFPE – Tissue Preparation Guide 外部リンク:Visium Spatial Protocols – Tissue Preparation Guide

事前提出いただくデータ

ご委託時に以下のデータを確認させていただきます。
いずれも弊社に委託可能です

  • HE染色画像:ダメージの少ない組織切片であることを確認します。
  • FFPEサンプルの場合:組織のDV200値:30%以上あることを確認します。
  • 新鮮凍結サンプルの場合:組織のRIN値:7以上あることを確認します。

参考画像

【FFPEサンプルの場合】

組織のご準備
事前にRNAを抽出し、DV200が30%以上であることをご確認ください。
またそれぞれのサンプルの接着テストを実施してください
(弊社へ委託可能)
切片からDV200値を測定
HE染色画像を取得
厚さ10 µmの切片を2-3枚以上使用いただき、RNA抽出してください。DV200値が30%以上のサンプルを受託対象としております。
切片をガラススライドに載せる
Gene Expression 解析を行う組織切片を厚さ5 µmで作製いただき、以下のいずれかのガラススライドに載せていただきます。1GEXスライド当たり2枚の切片を解析できます。
注)国内に流通しているスライドの中には対応できないサイズのものがありますので、必ずご確認ください
  • Epredia Shandon ColorFrost Plus
  • Fisher SuperFrost/ColorFrost
  • Sigma-Aldrich Poly Prep Slides
  • VWR SuperFrost Plus
6.5mm x 6.5mmまたは11mm x 11mmのキャプチャーエリア内に収まるように切片を配置してください。キャプチャーエリアより大きな切片の場合、中心位置を指定したスライドを提出してください。キャプチャーエリアの端は遺伝子検出率が極端に低くなります。
Gene Expression
ライブラリ作製
ハイブリダイゼーションさせたRNAプローブからcDNAを作製します。
スライドの位置情報を含んだバーコードをもったライブラリが完成します。
シーケンス
スポットごとに25,000リード以上で解析します。
それ以上をご希望の場合はご相談ください。
Space Ranger解析
Space Ranger (10x Genomics社製ソフト)を用いた解析を行います。
Loupe Browser解析
Loupe Browser (10x Genomics社製ソフト)を用いた解析を行います。

【新鮮凍結サンプルの場合】

組織のご準備
解析する組織を既定のOCT(Tissue-Tek* O.C.T. Compound 25608-930(サクラファインテック))で包埋してください。 事前にRNA抽出し、RIN値が7以上であることをご確認ください。
(弊社へ委託可能)
切片からRIN値を測定
HE染色画像を取得
厚さ10 µmの切片を10枚使用いただき、RNA抽出してください。RIN値が7以上のサンプルを受託対象としております。
切片をTissue Optimization用スライドに載せる
Tissue Optimization用に厚さ10 µmの切片を作製いただき、7枚をスライドに載せていただきます。7枚は全て同じ種類の組織としてください。
(弊社へ委託可能)Tissue Optimization
細胞透過酵素の処理時間を検討し、最適な透過時間を決定します。
サンプルごとに検討が必要になります。
切片をGene Expression用
スライドに載せる
Gene Expression 解析を行う組織切片を、スライドに載せていただきます。厚さ10 µmで作製いただき、1スライド当たり4枚の切片を解析できます。
6.5mm x x6.5mm のキャプチャーエリア内に収まるように切片を配置してください。キャプチャーエリアの端は遺伝子検出率が極端に低くなります。
1つのキャプチャーエリアに一種類の組織を乗せてください。異なる組織を載せると、酵素処理が適切にできません。
Gene Expression
ライブラリ作製
細胞を透過させ、RNAからcDNAを作製します。
スライドの位置情報を含んだバーコードをもったライブラリが完成します。
シーケンス
スポットごとに50,000リード以上で解析します。
それ以上をご希望の場合はご相談ください。
Space Ranger解析
Space Ranger (10x Genomics社製ソフト)を用いた解析を行います。
Loupe Browser解析
Loupe Browser (10x Genomics社製ソフト)を用いた解析を行います。

料金・納期

受託内容 サンプル
金額 おおよその納期
Visium CytAssist 6.5mm
(マウス/ヒト)
FFPE切片
お問い合わせ 6週間
Visium CytAssist 11mm
(マウス/ヒト)
FFPE切片
お問い合わせ 6週間
Visium TO
新鮮凍結切片 ¥ 260,000(1スライド当たり) 3週間
Visium GEX
新鮮凍結切片 ¥ 2,680,000(4サンプル当たり) 6週間

よくあるご質問

Visiumで解析できるサンプルは?

以下の10x社ホームページに記載がある組織で、Visiumの再現性が確認されています。こちらに載っていない組織でもご委託は可能ですが、結果の保証ができない点について、ご了承いただく必要がございます。

FFPEサンプルの場合

Visium CytAssist Spatial Gene Expression for FFPE Tested Tissues 10x Genomics社ホームページへ飛びます)

凍結サンプルの場合

Visium Spatial Gene Expression Optimized Tissues(10x Genomics社ホームページへ飛びます)

FFPEの場合、ヒトとマウスの組織で解析が可能です。
FFの場合、

<凍結組織で再現性が確認されている組織>

ヒト
  • 健常人検体:小脳、大脳皮質、側頭葉、脊髄、リンパ節、肺、乳房、心臓、腎臓
  • 非健常人検体:脳(多形性膠芽細胞腫)、リンパ節(リンパ節炎)、肺(乳頭癌)、乳房(浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌)、心臓(心筋梗塞)、脾臓(膵臓炎)、大腸(大腸がん)、卵巣(腫瘍)、腎臓(腎炎)
マウス
  • 健常検体:脳(胎生期E15/E18、出生後P1/P8)、目、嗅球、舌、肺、心臓、胃、肝臓、脾臓、小腸、大腸、大腿四頭筋、腎臓、卵巣、精巣
ラット
  • 健常検体:脳、嗅球、心臓、腎臓
ゼブラフィッシュ
  • 健常検体:稚魚(10 dpf)
膵臓や骨組織、脂肪を多く含む組織については10x社で再現性が取れていない組織となっております。

Visiumの解像度はどれくらい?

1スポット当たり直径55 µmの解像度で、スポットの中央点は100 µmの間隔で位置しています。 組織種によりますが、1スポット当たり10細胞程度含まれます。

Visiumに使用する凍結ブロックを作成するには、組織にどのような処理が必要?

組織を出来るだけ傷つけないよう、液体窒素上でイソペンタンに浸け急速凍結させ、OCTで包埋してください。詳細なプロトコルはこちらをご確認ください。

なおご委託の際には、以下のご確認をお願いしております。

  • OCT包埋後に10 µmの切片10枚を使用し、RNA抽出でRIN値をご確認いただき、7以上あることを確認(規定プロトコルあり)
  • HE染色画像を撮影し、組織像に崩れがないか確認

納品物は何でしょうか。

お客様がシーケンスをされる場合、ライブラリーを作製しお送りします。当社がシーケンスをする場合、シーケンス結果のFastqファイルとSpace Ranger(解析ソフトウェア)での解析結果のデータをお送りします。

自分でシーケンスする場合、シーケンスの条件はどのようにしたらいいでしょうか。

10x Genomics社のVisiumアプリケーションでは、以下の条件でのシーケンスが推奨されています。

リード数:(FFPE) 25,000リード以上/スポット
     (FF) 50,000リード以上/スポット
Read 1:28 cycle
i7 Index:10 cycle
i5 Index:10 cycle
Read 2:(FFPE) 50 cycle
    (FF) 90 cycle

データはどのように保管される?

解析データやお客様のサンプル情報等は納品後、3ヵ月まで当社内で保管しています。3ヵ月を経過すると廃棄しますので、予めご了承ください。